周囲騒音の90%を低減するノイズキャンセリング機能を搭載した「PXC450」。今回はオーディオライターとして雑誌やウェブで幅広く活躍する高橋 敦さん、音元出版発行のオーディオ専門誌「季刊・オーディオアクセサリー」の編集を担当する浅田陽介さんのお2人に「PXC450」を体験してもらった。これまでゼンハイザーの製品に関わらず、様々なヘッドホンを聴いてきた2人が下したジャッジとは・・・!?
PXC450のスペック

Part1 オーディオライターが「PXC450」の実力を徹底検証
ゼンハイザーショールームで体験する「PXC450」の性能
雑踏でも電車でも飛行機でもいつでも快適に音楽を楽しみたいという方にはもう当たり前の選択肢となっている、ノイズキャンセル機能搭載ヘッドホン。ゼンハイザーもこの分野には以前から取り組んでいたが、今回そのPXCシリーズに新モデルが加わる。シリーズ最上位モデルとなるPXC450だ。
最新かつ最上位のモデルであるから、ノイズキャンセル機能についても音質についても、あらゆる面で高いレベルが期待される。今回は同社ショールームでゼンハイザージャパン(株)コンシューマー営業チーフの渡辺 直樹氏にお話を伺いながら行った取材と、製品をお借りしての自宅試聴で、その仕上がりを確認させていただいた。
頑強な作りでありながら軽い装着感を実現
まず装着してみて感じるのが、見た目の頑強さ(もちろん見た目だけでなく実際に頑強な作りだ)の割には装着感が重くないということ。イヤーパッドと頭の上に当たる部分のクッション性と肌触りが実に良いことが理由だろう。こういったところにまでコストを投入できるのが上位モデルの優位さであるが、それが確実に功を奏している。
またヘッドホンを装着しただけの段階でも騒音はかなり抑え込まれる。自宅室内での試聴では、装着段階でハードディスク稼動音の、特に高域の成分がカットされ、そのうるささが薄れる。渡辺氏からも説明を受けたが、完全密閉型の構造に加えて前述のイヤーパッドで耳をしっかり覆い基本的な遮音性が高いことも、本機の総合的なノイズキャンセル性能に大きく貢献しているのだ。
そして電源を入れて「Noise Gard 2.0」と名付けられたアクティブノイズ補正機能をオンにすると、エアコンのゴォーという低い稼動音が一気に薄れる。その効果は明らかで、騒音の不快感をぐっと押し下げてくれる。
なおアクティブノイズキャンセルをオフ(バイパス)にするスイッチも用意されており、騒音の少ない場所ではオフにしてバッテリーの消耗を抑えることもできる。バッテリーは単4電池1本で約16時間と必要十分な持続時間を確保している。
ヘッドホンをはずさずに外音をはっきり聞き取れる「トークスルー機能」を搭載
ハウジングには電源オン/オフとノイズキャンセルのバイパスの他に、ボリューム調整と、トークスルーというスイッチが用意されている。気になるのは後者だろう。
スイッチを押すと再生音量がすうっと最小限に下がり、加えて周囲の音がマイクで拾われてヘッドホン内に届けられる。これを使えばヘッドホンを外さなくても周囲の会話や車内アナウンスなどを聞き取れるわけだ。
なるほど本機は基本的な遮音性が高いだけに、このような機能がないと不便な場面もあるだろう。気の利いた装備だ。取材時も試聴の合間にお話を伺うのに役立った。
携帯性についても、大型ユニット搭載機としては優れた部類。簡単な折りたたみ機構が搭載されており、折りたたんだ状態にフィットする専用キャリーケースも付属する。普段使いのカバンに収めるには少々大きいが、スーツケースを想定すれば収まりは良さそうである。
音質チェック − 繊細で柔らかい表現が印象的
さて肝心の音質はどうだろう。ノイズキャンセルをオンにした状態で何曲か聴き込んでみた。
全体的に柔らかで繊細な描写と中低域の厚さが印象的。音色はしなやか。情報量は多いのだが解像感やシャープネスを強調することはなく、なじみの良い音場。
上原ひろみ「Beyond Standard」のシンバルは、粒子が細かくふわっとした柔らかさを持つ。ピアノは角を立てずにしっとりと艶やか。ギターのクリーントーンも滑らかな手触り。ベースはがっしりとした筋肉質ではなく、柔軟性を感じさせる描写だ。ドラムスのタムやバスドラムは胴の響きを十分に感じられる。
Jacintha「Autumn Leaves」でも楽器のニュアンスは同様に、繊細さとやわらかさが持ち味。ウッドベースがかなり低い音程で動く場面にも音程感を失うことなく追従し、低音域の再現性の高さを見せる。ピアノはかっちりしたリズムと柔らかな音色というコントラストで深みを増し、ドラムスのソロはいかにも太鼓という豊かな響きで演奏の大胆さを印象付ける。アカペラから始める曲では、柔らかな歌声から響きが大きく広がる様を存分に味わえる。
音質的にもさすが最上位モデルと納得できる仕上がりと言ってよいだろう。ノイズキャンセル搭載機であるから、場所を選ばず騒音に掻き消されることなく、この音質を楽しめるわけだ。
ノイズキャンセル機と言ってもただ騒音がカットされるだけでは満足できない。静けさを背景にするからこそ再生音質そのものが良くなければ意味がない。そう考える方に聴いてみてほしいヘッドホンだ。
著者プロフィール

高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple
Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。
Part2 オーディオ誌編集部員が「PXC450」と空の旅に出た
エコノミークラスでファーストクラス以上の静けさをゼンハイザー「PXC450」と挑む海外出張
ノイズキャンセルヘッドホンがなぜ必要か?
「飛行機での空の旅」。このように聞くと、なにやら優雅なイメージを抱くのは私だけではないだろう。しかし、そこにはさまざまなストレスの要因がある。なかでも85dB以上に達するといわれている機内の騒音は、精神的にも肉体的にも大きな疲労をもたらしているだろう。一般に会話困難となる騒音が80dBといわれているので、その数値を上回る騒音は決して軽視できない。
また、ただでさえ“ヘッドホン難聴”という言葉が生まれるくらいだ。そんなにうるさい中で、機内エンターテインメントや音楽を楽しもうとすれば、当然、それを上回る音量が必要となるわけで、耳に大きな負担をかけることは間違いない。近年、ノイズキャンセリングヘッドホンが脚光を浴びているのは、こうした背景があるからである。
選んだ理由。それは音に対する信頼性
そこで、今回はゼンハイザーのノイズキャンセリングヘッドホン「PXC450」を旅の伴侶として、長時間フライトへと挑んだのである。数あるノイズキャンセリングヘッドホンがあるなかで、なぜ「PXC450」か?
それはゼンハイザーの製品だからである。同社はヘッドホンをはじめとして、さまざまなアーティストが使用しているマイクロホンなどを手がける、世界を代表する音響機器メーカーである。少なくとも音楽を志したことのある人なら、一種の憧れにも似たイメージを抱いているかもしれない。私もそのひとりだ。それほど同社の製品は音楽ファンから高い信頼を確保している。
装着感、ノイズキャンセリング機能共に最高級のクオリティ

機内で「PXC450」の実力を確かめる筆者
搭乗手続きを終え、機内に乗り込む。機体が水平飛行となりシートベルト着用サインが消えると、待ってましたといわんばかりに即、本機を取り出して音楽を聴くことにした。
まず、装着感からさすがと思わされる。質量は240gと現在のヘッドホンの水準から見れば決して軽くはないはずなのに、その重さを感じさせることはない。装着による圧迫感も絶妙で、まさにジャストフィット。この段階で通常のヘッドホン以上の遮音を実現している。
そして、いよいよ本体Rch側のスイッチでノイズキャンセリング機能をオン。動作確認音と共に “ゴーッ!”と機内に響くエンジン音がほぼ消え、静寂が訪れた。特に、最も不快感を与えるとされる低周波ノイズに対しての効果は絶大で、こちらはほぼ100%に近い効果といっても過言ではなさそうだ。他のノイズキャンセリング型ヘッドホンと比べても、トップクラスに位置する効果ではないかと思う。
また、飛行機の中で意外に多いのが、客室乗務員とのちょっとした会話。その都度、いちいちヘッドホンを外していては面倒だ。本機はこの問題を解決するトークスルー機能を装備しており、いちいちヘッドホンを外さずに会話が聞き取れるのも気が利いている。“トラベルライン”というだけあって、旅の途中で予想されるさまざまなケースを想定した気の効いた装備といえるだろう。
オーディオファンを魅了する“ゼンハイザー・サウンド”はノイズキャンセリング型でも健在
さて、ヘッドホンは本来音楽を楽しむもの。音が良くなければお話にもならない。しかし、この辺りはやはりゼンハイザーだ。古くからオーディオファンの間では“ゼンハイザー・サウンド”という言葉が存在するほど、その音質には定評がある。これは本機においても例外ではなく、心地よい高域の伸びと繊細な再生音を聴かせてくれる。特にお薦めしたいのが、ロックとジャズ。スカーンと抜けた爽快なサウンドは、なかなか味わうことができないはずだ。
ここで一端、トイレへと席を立つためにヘッドホンを外すと「飛行機ってこんなにうるさいのね」と気付かされる。それからというもの、ヘッドホンをつけたまま眠りにつくことになり、気が付いたら目的地に到着したのであった。
正直、エコノミークラスでこんなにゆったりと自分の好きな曲を聴きながら、そして熟睡しながら空の旅が楽しめるとは思っていなかったことを最後に付け加えたい。
目的地であるドイツに到着してから街中でも使用してみたが、自動車のエンジン音もきれいにキャンセリングしてしまうため、やはり歩きながらの使用は危険。しかし、広場など、穏やかな陽気を浴びながらのリスニングは、快適この上ないものとなった。













